ワンルーム暮らしミニマリストブロガーのまさすみです。
前回は老子第17章を紹介しました。↓
https://otukisama.com/laozi-17
今回は、第18章。
他の章に比べて文字数も少なく分かりやすくなっています。
冒頭の句は「大道廃れて仁義あり」として有名な言葉です。
それでは、ご覧ください。
老子 第18章の原文
大道廢、有仁義。
智惠出、有大僞。
六親不和、有孝慈。
國家昬亂、有忠臣。
18章の訳・私の解釈
正しい生き方が失われると礼儀や道徳が叫ばれる。
こざかしい知恵がつくと巧妙な嘘が生まれる。
家族が不仲になると孝行が必要とされる。
国が乱れると忠臣が求められる。
解説・私の思うこと
「大道廢、有仁義。
智惠出、有大僞。」
訳:正しい生き方が失われると礼儀や道徳が叫ばれる。
こざかしい知恵がつくと巧妙な嘘が生まれる。
「大道廢、有仁義」=「大道廃れて仁義あり」の故事ことわざになっています。
儒教の「仁義」を非難しているとも言われています。
18章全体を通して老子らしい逆説的な表現になっています。
「〇〇した方が良い」と言わないのが老子らしいですね。
世の中が乱れると仁義が必要だと言われるようになります。
人々が正しい生き方をしていたら仁義ということを考える必要もありません。
おのずと仁義のある生き方になっているわけです。
昨今で言えば「モラルが無い人が増えた」という言葉を聞きますが、以前は今ほど言われていなかったと思います。
自分勝手な人が増えてしまったからであり、その結果モラルが必要と言われるようになりました。
情報がたくさん入ってきて知恵がつくと他人との比較や不足感、嫉妬心が生まれます。
人より得をしようとしたり、独占しようとすることにより、嘘や犯罪が生まれることにも繋がります。
「六親不和、有孝慈。
國家昬亂、有忠臣。」
訳:家族が不仲になると孝行が必要とされる。
国が乱れると忠臣が求められる。
内政が乱れている国ほど、愛国心を植え付けようとします。
住みよい国であれば自然とそういったものは口に出さずとも国民の中に生まれます。
17章にも似ている例がありました。
優れた君主が治める国の国民はそもそも平和が当たり前。
平和なので国政に不満がないので愛国心という言葉自体、必要ありません。
この章で老子が言っている意味は分かりますが解決法を言っていません。
老子は何が言いたいのでしょう?
愛や正義が必要なのは確かです。
老子はそれ自体や儒教を否定しているというよりは、その前にもっと根本的な要因があると言いたいのだと思います。
例えば、罪と法の関係性もこれに似ています。
罪があるから法律が必要なのは一般的に考えて常識です。
現代は多くの情報や刺激があり、それゆえ犯罪も多様化、悪質化しています。
それを取り締まる法律がさらに必要になり、今後も犯罪はどんどん巧妙化していくでしょう。
これではイタチごっこで終わりがありません。
老子が言いたいのは法律を作るよりも犯罪が起きてしまう根本的な原因を考えよと言っているのですね。
親孝行が必要だと叫ぶのではなく、なぜ必要になってしまったのか?
ここぞとばかりに忠臣が出て来なくても世の中が良くなる方法は?
老子はこのように問題提起しています。
その解決方法のポイントは、やはりタオです。
私が思うのは個人と全体のバランス。
人類は昔、集団で生きていかなくては生き延びることができませんでした。
自分自分と主張していたら生きていけません。
個人でもありますが、ほかの人との境目が少ない状態です。
周りの一緒に暮らしている人も自分の一部なのです。
さらに広い視点で見ると、自然も自分の一部になっています。
こういう状態の究極がタオと一体になることです。
タオと一体だとまさに老子がこの章で言おうとしている理想の状態です。
一方、現代のように一人でも生きていけるような環境になると個の意識が強くなります。
一人の人間として自由と多様性を持つことは大事。
しかし個が強くなると他人と自分の比較が強調されます。
そうなるとこの章で問題提起されているような状態になります。
では、どうすればいいのか?
比較することを止めて足るを知り、執着をゆるめる。
でも、これは「みんなもこうしよう!」というものでもないですね。
自分の今までの人生の経験を通して「足るを知る」「執着をゆるめる」などのシンプルさに気づいたときに初めて理解できることです。
だから、老子もこの章であえて言わないのです。
言うのは野暮なこと。
気付いた人が日々の生活の中で自然と実行していくことで、結果的に自分の周りにも少しずつ影響していくだけのことなのですね。
あとがき
いかがでしょうか?
老子が18章で言っていることは、すべて今の日本に当てはまりそうです。
日本は確かに平和で恵まれていますが、本当の幸せな世の中とは何なのか考えさせられます。